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2015年12月23日水曜日

東芝と化血研に共通する悪しき「名門意識のおごり」とは何か?(その2)

化血研、動物ワクチンも不正製法…農水省調査   ●化血研は日本の誇りだった

 詐欺グループのような偽装テクニックに加えて、薬害エイズ訴訟でも被告になったというプロフィールを聞くと、この組織はなにやら「趣味は不正と隠蔽ですみたいなアコギな人間ばかりが働いているイメージを抱く人も多いかもしれないが、そんなことはない。

 「化血研」は東芝同様、戦後の日本の発展を支えてきた名門企業なのだ。

前身は、大正末期の実験医学研究所という歴史をもち、一時期は世界最高水準の研究開発業績をあげた。ポリオワクチンを昭和36年(1961年)に発売して多くの人々を救った。

 また昭和55年(1980年)には、年間数十万人の治療に使われる献血ベニロンというワクチンも開発。さらに、日本で初めて遺伝子組み替えによるB型肝炎ワクチン開発に成功した。
 この当時、化血研は日本の誇りだった
実際に、昭和62年(1987年)11月19日の『日経産業新聞』で研究開発担当理事は「世界初の開発は米メルク社だが、特許申請でみれば化血研はメルクに一週間遅れただけ」なんて感じで胸を張っている。

 薬害エイズ問題で、名声は地に堕ちた部分はあるが、今もインフルエンザワクチンの製造で、国内シェア約3割を占めていることからも分かるように、製薬業界や研究者の間では誰もが認める「名門」である。ならば、三鬼氏が指摘したような「名門意識からくるおごり」がこの組織を蝕んだ可能性はないか。

 実際、今回の不正を調査した第三者委員会は報告書で興味深い考察をしている。
化血研は、戦前熊本医科大学に設置されていた実験医学研究所を母体としているという出自や国内における血漿分画製剤開発のパイオニアの一社であるという歴史等から、その名のとおり研究所としての性格を色濃く持ち、製造工程にも研究者としての気質が反映されていた。

 化血研のそうした企業カラーは悪い面ばかりではないが、「自分たちは血漿分画製剤の専門家であり、当局よりも血漿分画製剤のことを良く知っている。」

 「製造方法を改善しているのだから、当局を少々ごまかしても、大きな問題はない。」という「研究者としてのおごり」が本件不整合や隠ぺいの原因となったことを忘れてはならない  
  一般財団法人・化学及(および)血清療法研究所(化血研、熊本市)が血液製剤などを国の未承認の方法で製造していた問題で、化血研が家畜などに使われる動物用のワクチンも未承認の方法で製造していたことが、農林水産省の調査でわかった。
 化血研はこれらの一部の出荷を自粛している。不正製造は継続的に行われていたとみられ、同省は今後、医薬品医療機器法違反の疑いで化血研を立ち入り検査する方針。
 虚偽の製造記録を作成するなどの隠蔽工作は現時点で確認されていないが、医薬品製造に対する国のチェックを軽視する姿勢が、化血研の各部門に広がっていた可能性が出てきた。
 同省によると、今年2月、化血研から、一部の製品を国から承認された手順と異なる方法で製造していたという報告があり、同省が調べたところ、化血研が製造する動物用のワクチンなど約50種類のうち、約30種類に上った。豚や牛などの家畜に下痢や流産などを引き起こす感染症を防ぐためのワクチンや診断薬などが含まれる。
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化血研」に立ち入り検査、無届けで毒素運搬か:12月21日

 
 血液製剤などを不正に製造していたことが問題になっている製薬メーカー「化血研」が、必要な届け出をせずに致死率の高い毒素を運んでいたとして、厚生労働省は21日、立ち入り検査に入りました。
 立ち入り検査は感染症法に基づき行われ、午前9時前、熊本市にある化血研の本社に厚生労働省の職員が入りました。

 この問題は化血研が2007年と今年10月のあわせて4回にわたり、必要な届け出をせずに強い毒性を持つボツリヌス毒素を運んでいたものです。ボツリヌス毒素は致死率が高く、生物兵器テロに使われる恐れがあるとして、運搬には都道府県公安委員会への届け出が義務付けられています。

 化血研をめぐっては、長年にわたり、血液製剤などを不正に製造していたことが問題になっていて、厚労省は近く、行政処分を行う方針です。
                                                    (おわり

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