ブログ アーカイブ

2010年3月18日木曜日

3月19日・「只今!」小旅行していました(その2)

 2日目・勝浦ー串本ー(枯木灘)ー周参見(枯木灘航空写真)


 明けて16日、悪天候は夜のうちに過ぎ去った。が、天気はもう一つ快晴とまではゆかぬが比較的穏やか。遅めの朝食をとり、ゆったり行動。きょうはここから数十キロ和歌山方面に北上した白浜の手前にある周参見という処まで辿ればよい。

 パソコンでSUSAMIと入力すると「荒み」と転換される位に太平洋に面した海岸線は荒々しい。波の打ちつけ方が激しいものがある。

 串本の西、海中公園がある辺りから周参見に至る海岸線を「枯木灘」と呼ぶ。
気候温暖な南紀の海岸に枯木の名を冠するとは気候の厳しさをいうのではなく、山が海岸線まで迫り波に洗われた岩石がごつごつとしているさまをいうのだろう。

 ここは「吉野熊野灘国定公園」の一角を占める。そして周参見は船の避難停泊の泊であった。そういうことで勝浦駅界隈でゆっくりしながら西隣の串本町へ、串本に入る手前あたりから奇岩が立ち並ぶ。「橋杭岩」の名で有名な名所である。
 串本は民謡「串本節」で有名な町、そして突き出た岬はご存じ「潮岬」、白い灯台があり芝生の開けた広場が春の日差しに心地よい。ここは本州最南端に位置する場所になる。この辺りは「橋杭岩」「海金剛」の名で知られた奇岩や断崖絶壁等,ごつごつした岩のオンパレードが続く海岸線であり、絶景が続く。

 余談になるが、橋杭岩のある対岸の大島に近畿大学水産研究所があり、ここで黒マグロの完全養殖の研究に長年取り組み、最近ようやくこれに成功したと報じられていた。実に34年掛ったそうだ。黒マグロの捕獲禁止が叫ばれ、大西洋、地中海での捕獲禁止条例案が出される等、動きがあわただしい。
 
 今回は幸い禁止条例案が否決されたが、いつナンどき再び禁止の声が高まるやも知れず、このなかにあって完全養殖成功のニュースはマグロを世界で一番消費するわが国にとって、将来の展望が開けた想いがする。いまは静かなこの辺が、にわかに慌ただしくなりそうな雰囲気である。




(枯木灘海岸風景)





(橋杭岩・海金剛風景)

           (右・串本海中公園のテーブル・サンゴ)


      (マグロ定食) 

 それはさておき話を串本の町へ戻して、串本駅の西南の方に狭い道をしばらく行くと串本小学校の近くに禅宗「無量寺」というお寺へ行き当る。このお寺に小さいが「応挙・蘆雪美術館」が併設されていて長沢蘆雪の「猛虎図」(重文)が、つとに有名である。

 昨年東京国立博物館で「巨匠対決」という有名絵師同士の取り組みで、有名な絵を対決させた特別展が開催され、そのとき、長沢蘆雪は師匠の円山応挙と「猛虎」の絵で対決している。この蘆雪の絵は、無量寺の、ここ「長沢蘆雪美術館」から出品されている。

 重要文化財指定のこの絵は人気が高くて、あちらこちらの展示会に貸し出されることが多く、そのためデジタル複製画が代わって留守を守っているが、入館料は複製でも同じですからご注意を・・・

 では、参考までに昨年開催された朝日新聞主催、創刊記念『國華』120周年・朝日新聞130周年特別展「対決-巨匠たちの日本美術」のアドレスを掲げておきます。
 http://www.asahi.com/kokka/masterpiece/9.html

◎「串本応挙芦雪館」
 串本の町の狭い通りの一角にあるお寺、無量寺。その境内に併設されている小さな美術館が串本応挙芦雪館です。円山応挙、長沢芦雪の作品を中心に、室町、桃山、江戸時代の絵画96点を展示しています。ほかに串本の笠嶋遺跡からの出土品も展示してる。

 禅寺である錦江山<きんこうざん>無量寺は、もともとは串本町の袋という地区にありましたが、宝永4年(1707年)10月の津波のために流失。中興の祖と呼ばれる愚海和尚<ぐかいおしょう>により、天明6年(1786年)に現在の位置に本堂が再建された。

 その際、愚海和尚とかねてより親交の厚かった絵師・円山応挙<まるやまおうきょ>は、青年期に愚海和尚と約束した「一寺の主となったとき絵を描きに訪れましょう。」を果たそうとしましたが多忙のため応挙は弟子である長沢芦雪<ながさわろせつ>を使いにたて、これらの障壁画を無量寺までとどけました。

 また、やってきた芦雪は愚海和尚の薦めで串本に長く滞在し絵筆をふるい、多数のふすま絵を描きました。現在、これらの絵は境内にある串本応挙芦雪館内に展示されているほか周辺のお寺にも残されている。

(円山応挙作品)
紙本墨画波上群仙図 壁貼付2、襖貼付6
紙本墨画山水図 床(とこ)貼付4、違棚壁貼付4
紙本金地著色群鶴図 天袋貼付4

(長沢芦雪作品)
紙本著色薔薇図 襖貼付8(上二之間)
紙本墨画竜虎図 襖貼付12(室中及び仏間)
紙本墨画群鶴図 壁貼付1、襖貼付6(下一之間)
紙本墨画唐子琴棋書画図(遊図) 襖貼付8(下二之間)

所在地   串本町串本833
アクセス  JR紀勢本線串本駅より徒歩10分・駐車場 あり(無料 )10台
営業時間  9時30分~16時30分(入館は16時まで)                        

休業日   12月30日~1月3日
入場料   1,000円(小中学生500円)
電話番号  0735-62-6670












猛虎図屏風(上) (もうこずびょうぶ)
円山応挙筆・6曲1双 江戸時代・18世紀
個人蔵・ 重要文化財 虎図襖 (とらずふすま)
日本の絵画を革新した応挙は、虎や豹(虎の雌として描かれていました)のさまざまな形と、丹念な毛描によって猛々しさを表現しています。観ている側が虎の迫力に気圧されるようです
☆              ☆
長沢芦雪筆(下)6面のうち4面 江戸時代・天明6年(1786)
和歌山・無量寺・串本応挙芦雪館蔵
日本で最大の虎の絵(虎は3mを超える)といわれます。顔より大きな前足や、長すぎる尾が、今にも襖から飛び出してくるような躍動感を生み出しています。猫を思わせる顔の虎の襖絵の裏には、魚を狙い前足を伸ばす猫が描かれています。


  




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 では、串本の街をあとにして、これより太平洋に面した「枯木灘」という海岸線を約30km北上し、今日の宿泊地すさみ(周参見)まで行くことにする。時間にして約45分のコースである。

 さきほど「枯木灘」について、その由来に少し触れたが、時間があるので道すがら、もう少し解説を続けさせて頂くことにする。

 古くから紀州の海、周参見の沖合いを航海する船乗りの間では、この地方を「枯木灘」と呼んでいた。

 明治43年(1910年)発行の「周参見村郷土誌」には、『周参見港より以南二色の袋港に至るの海上数十里一帯を枯木灘と称し、古来東牟婁郡大島港出港の上り船は、周参見港湾に寄港して風を避くるの外他に良港無きを以て、其海上を枯木と称し船人警戒するところなり・・、』とあって、古くから呼称されていたことが伺える。

 和歌山県が昭和29年、県立公園として「枯木灘海岸」の名称で制定し、周参見町と江住村の境界から、串本町有田(西方・串本海中公園がある処)の錆浦までの地域を指していた。

 この枯木灘の参見駅湾に浮かぶ「稲積島」がいかにもいい。神武東征の折、食糧の稲をこの島に積み上げたという伝説からきた島名であるといわれる。青の海面に半円状のホッコリして浮かぶ緑濃い島で、色彩コントラストが良くここから望む夕景もまた絶品という。

 地元紀州・新宮出身の作家・中上健次が長編小説『枯木灘』を描いている。
中上健次は1975年(昭和50年)、『岬』で第74回芥川賞を受賞している作家で、所謂、「紀州サーガ」と呼ばれる紀州熊野を舞台にした数々の小説を描き、独特の土着的な作品の世界を作り上げた。

 また、演歌歌手・都はるみが『枯木灘残照』を歌っていた、残照とは日が沈んでも、なお空に残っている光や夕焼けをいう。

『枯木灘残照』  詞 道浦母都子(和歌山県出身の詩人・歌人)

両手(もろて)にて君が冷えたる頤(おとがい)を
包みていしは冬の夕駅
君に妻われに夫(つま)ある現世(うつしよ)は
姫浜木綿(ひめはまゆう)の戦(そよ)ぐ明かるさ
歳月(とき)はながれて 歳月はながれて いまひとり
あゝ残照の枯木灘・・・・  

 歌の文句はチョッと判りにくいが、歌人・道浦母都子(みちうら もとこ)の文語調の歌詞が良い。

 紀伊は、紀伊山地と言われるほど、重畳たる山脈でその殆どは覆われている。 しかもこの地域は日本一雨量の多いところである。 折り重なるような山稜の間を、屈曲しながら多くの河川が急流を成して、太平洋、熊野灘に落ち込んでいる。これらの河川は上流、中流をとわず多種多様に造形されて自然の景勝を見せている。この辺り一帯は海岸線だけでなく、山並みも素晴らしい。紀州、木の国といわれる所以である。

 きょうの天気は比較的穏やか、空は少々霞んでいる。やはり春かなぁ、と感じたが、霞みではなくて、中国渡来の「黄砂」だとか、この「黄砂」自体も春の風物詩の一つだから、これもまた「春」か?
 そういうことで、旅先で「春一番」「黄砂」と二つとも招かれざる「春」に遭遇したような次第である。
 
 周参見到着、きょうのお宿は周参見駅の1.5Km西の高台にあるホテル・ベルヴェデーレ、比較的新しくて西日本では割合評判がよい。知り合いで、ここを利用した方が3.4人いて、機会があったら是非にと奨めてくれていたので、コースに組み入れた訳だ。海岸の近くでしかも高台ということなら、あとはお天気が良くなることを祈るのみ、夕日に日の出が楽しみ。これだったら「枯木灘残照」が見れるかも・・・!
 それに名物「くえ料理」が何よりも楽しみである。(次回に続く・・・)
※参考
◎「すさみ町」すさみ・スサミ・荒み・遊み・周参見
◎「すさみ八景」http://www.aikis.or.jp/~susami-k/hakkei/index.html


2 件のコメント:

  1. しげやん^^こんばんは~
    南禅寺に水のみの虎と言うのがありますが虎は見てるだけで
    飛び掛ってきそうですね^^
    くえも楽しみです^^いい所にいってきましたね
                 atiti

    返信削除
  2. RE: atitiさん
    あともう1回続きます。周参見のホテル・ベルヴェデーレと
    いう比較的新しい処で、「クエ」も喰えました。
    あすもお訪ね下さい。和歌山も近場でいいとこあります。
    遠くに足を伸ばさず、近場でゆっくり旅を心がけます。
    桜の開花宣言がでて、楽しみです。
    お城の枝垂れ桜も咲いているそうでatitiさんのパトロール
    忙しくなりそうですね。
    しげやんとこは紀三井寺遊歩道、温山荘公園の近場で見られ
    ます。あとはお天気が定まって欲しいですね!期待します。

    返信削除