ブログ アーカイブ

2011年10月4日火曜日

4日・「黒江の街おこし運動」のモデル『黒江ぬりもの館』の紹介(前半)

  「黒江」の街は古代から知られ、万葉集にも数種詠まれた歌が遺されている。
近世は日本四大漆器産地として繁栄してきたが、近年はその衰退に歯止めが掛からず、また一種独特のノコギリの歯状の町並みは「重要伝統建造物保存地区」に指定されるに相応しい姿を残しているが、地元においては近年「町並み保存」や「街おこし運動」を推進しようとするいくつかのグループが生まれている。

  その活動も活性化されつつあり、催しも数を増やしてきている。これらにより、「黒江」の町並み保存と活性化が待ち望まれるが、その中の一つのモデルとして「黒江ぬりもの館」を最近A新聞が「和歌山版」の3分2を割いて大きく掲載されたし、各方面からの取材も多くなってきた。そこで「黒江の街のシンボル的存在となってきた「黒江ぬりもの館」を紹介するととにした。なんといっても黒江の街はわたしが生まれ育った街でもあるのだから・・・

◎「黒江の地名の由来」
今から約1300年前の昔、大宝元年(701)持統、文武両帝が牟呂の湯(白浜温泉)への行幸の途中度々ここ黒江に立ち寄られ遊興されたようで、その節、柿本人麻呂も愛する人とも一緒に随伴したのでしょう。そのことが万葉集にある柿本人麻呂の歌で伺えます。
紀州の名水「黒牛の水」の井戸舎
紀伊名水の一つである「黒牛の水」の井戸舎の改築を 皆様方の御寄付により建立されました。(黒江の氏神:中言神社) 
黒牛潟を詠んだ柿本人麻呂の萬葉歌碑
「万葉歌」

古(いにしえ)に 妹(いも)と我が見し ぬばたまの 黒牛潟を見ればさぶしも
(柿本人麻呂)
 
人麻呂は愛する人を失った寂しさに
黒牛潟に物足りなさを感じつつ過去を偲び詠んだ歌です。 万葉の頃の人々は潮干狩りは珍しかったに違いない。

黒牛の坐像(中言神社境内)
  往古 この付近jまで海岸が深く入り組んだ入り江でした。
「紀伊続風土記」の中に「この地いにしえは海の入り江にてその干潟の中に牛に似たる黒き石あり、満潮には隠れ、干潮には現れる。よりて黒牛潟と呼ぶ、黒江は黒牛潟の略語なり」と記されています。黒江と言う地名はこの黒牛潟に由来しています。
この中言神社に 黒牛が奉納されています。

  黒江は戦国時代の天正13年(1485)羽柴秀吉の紀州征伐により、新義真言宗の総本山『根来寺』が焼き討ちにあい、根来塗りの技術をもった僧兵がこの地に逃れ、漆器の技術を伝えたことに端を発し、徳川時代には紀州藩の庇護のもとに大いに栄え、独特の町並みとともに、漆器日本四大産地の一つとして繁栄しました。

「紀伊国名所図会」にある「黒江」の漆器
紀州漆器[黒江塗り」は,会津(福島県)、越前(福井県)、山中(石川県)とともに、わが国の四大漆器産地のひとつに数えられ、江戸時代の初期から渋地椀の産地として知られていました。紀州漆器の歴史は室町時代紀州木地師によって渋地椀が作られたのが始まりで、根来寺で、僧侶達が寺用の膳・椀・盆・厨子などの什器を自ら作ったのも起源の一つといわれています。

ただ近年は漆器業は衰退の一路を辿り、独特の『町並み保存』と『街おこし運動』が熱心な有志の手で盛り上がりつつあることは、黒江で生を受け少年時代を育ったわたしにとっても、まことに意義深いものがあり、この春から下の掲げる『黒江ぬりもの館』のアドバイサー・スタッフの一員として少しでもお役に立てればと考えています。
 黒江ぬりもの館パンフレット
                                 ◇                   ◇
「黒江ぬりもの館」

黒江ぬりもの館(前半)
    黒江の漆器は大半が伊予(愛媛)商人によって全国に売り捌かれ、観光客が来てもお土産を買えない状態でした。そこで平成元(1988)年、江戸時代後期に建てられた漆器職人の家をそのまま使い、当時を忍ばせる小売り店として発足させたのが「黒江ぬりもの館」です。
   
 「ぬりもの館」は池原庸夫(漆器製造販売業・わたしの甥に当たります)氏が地元で漆器製造・販売に携わる4業者で開設、「根来塗り」の研ぎだし体験もでき、誰でも漆器商品を買えるようにし、またノコギリの歯状に並んだ一種独特の「町並み保存」を兼ねて開設され、マスコミにも度々採り上げられ、90年頃は年間入館者は2万人にも及んだ。

    しかし、漆器産業の不振が響き最近では年間6000人にも減少、加えて共同運営してきた4業者のうち1業者が倒産、1業者も廃業、さらに残る1業者も手を引くことになり、残された池原さんは2008年11月末で閉館を決断せざるを得なかった。20年の歴史をもつ「黒江ぬりもの館」は所期の目的を達成することなく店を閉じようとしていた。

この記事は15日「後半」へと続きます。併せてご覧下さい。

0 件のコメント:

コメントを投稿