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2012年5月31日木曜日

ゴルフにおける韓国女子選手強さの秘密(最終回)

 第30回を数える記念すべきロンドン五輪の開催(7/27-8/12)まで2ヶ月を切り、いよいよカウントダウンに入った。前回まで紹介してきたゲストスピーカー金愛淑氏によるゴルフの講演は終わり、氏との一問一答に入ったが、ロンドン五輪を迎えるに当たって、ゴルフの世界で紹介してきた日本:韓国の関係はオリンピックの世界では果たしてどんな成績になるのであろうか?
興味ある処である。
 


 




                                                                               因みに直近の2008年北京五輪の日本と韓国のメダル獲得数は以下の通りである。日本の人口比4割の韓国に対してである。ここにもゴルフで見られた若年からの英才教育が見られるのである。         (2008年 北京オリンピックメダル獲得数)
          金     銀     銅      合計
  日本     9      6    10      25
  韓国    13     10     8      31

では、ゴルフにおける韓国人選手の強さの秘密・ ゲストスピーカー 金愛淑 の最終回を彼女との
一問一答 型式で締めくくるとしよう。

質問 韓国ゴルフが発展した一つの要因として、それまでプロゴルファーが務めていた協会の会長を、企業など外部から招いたことにあるといわれました。外部の人間を重職に抜擢した理由は?

キム氏 1998年まで韓国女子プロ協会は女子プロ出身者が会長を務めてきました。当時は、試合数もまだ少なく、選手数も少ないのが悩みでした。そこで選手総会で「外部からビジネス経験のある方を入れて、試合数を増やしゴルフ界を発展させていくアイデアなどを勉強させてもらおう」と選手総会で決議し、外部から会長や局長、理事を迎え入れました。スポーツだけやってきた人たちでは運営の考え方がビジネス的なところまで広がっていかなかったので、外部の力を借りお互いに協力しながら発展してきました。

質問 韓国のゴルフ場、練習場の費用などについてもう少し詳しく話してください。

キム氏 ゴルフにかかる費用はキャディ付きで1ラウンド1万円くらい。韓国では、選手がゴルフ場で練習する時に値段が安くなるということはなく、正規の金額をきっちり払って練習しなければなりません。韓国のゴルフ場は、明るくなると同時にスタートするんです。朝まだ暗いうちにゴルフ場に行って練習して、規定の時間にスタートし、ラウンド後もボールが見えなくなるまで練習をします。
これが国の代表になったりすると、値段が安くなったり、税金だけで回れるゴルフ場があったりします。一般のジュニアたちも通常の値段で練習します。練習場は、地域の学校と連携している施設があり、そういうところで安い金額で練習することもできるんですが、それは学校からの支援があるからです。あとは国の代表になったり、市の代表になったりすると支援があります。例えばソウル市の代表はソウル市から練習費用などの援助があります。
ジュニアにとっては、国や市などの代表、つまりナショナルチームに入ることができれば、練習環境はものすごく良くなるわけです。

質問 去年米国で、英語が話せないとトーナメント出場資格を与えないという規定が提起され、大騒ぎになりました。日本ツアーで戦う韓国人ゴルファーは、キムさんも含め非常に日本語が達者でいらっしゃいますが、海外ツアーに行く際にはそういったゴルフ以外の面も大切でしょうか。

キム氏 ジュニアの合宿の中には、英語の勉強もプログラムに含まれています。ですから、英語もある程度は話せるようになります。私が来日した当時は「月例」というのがありまして、そこでポイントを稼いで試合に出られるまでに一年はかかりましたので、その間に日本語を勉強することができたんです。
今はQT制度に変わって、QT上位に入れば、すぐに試合に出られるため、日本語を話すことが出来ない選手が多くなっています。辛ヒョンジュ選手や全美貞選手は、2.3年経って大分上手に話せるようになりました。やっぱり外国語の習得にはそのくらいは必要ではないでしょうか。
実は、日本ツアーでもプレスの方で、外国の広報に対する、そういうところを協会ももの凄く神経を使っているところなんですが、日本語を上手になってもらいたいというのはあります。
QTのルールで今年から日本語と英語のみがOKで、通訳を同伴してはいけないという規定が盛り込まれました。個人的には、非常に残念なことではあります。
その国の文化に慣れ、言葉が話せるようになるのには、ある程度時間がかかります。少し待っていていただければ韓国人選手もちゃんと話せるようになりますので、その辺はご理解いただければと思います。

質問 日本人選手もアメリカツアーで戦っていますが、韓国人選手の活躍に比べると見劣りする感があります。日本人選手が海外ツアーでさらに活躍するためには、何が必要でしょうか?

キム氏 日本人選手は、選手としても、社会人としても「優等生」が多いですね。韓国人選手は、実力志向というか、「世界一になる!」という目標が、一番に来ます。他に気を回すことは少なく、目標に向かってひた走る。そこが韓国人選手と比べて日本の選手には欠けている部分でしょう。
今まで米ツアーで戦った韓国人選手を見ると、日本ツアーで活躍してゴルファーとしての立場を確立させ、さらにステップアップのためにアメリカに行く人が多いんですが、自分の地位を安定させて次に行くというよりは、目標の場所に飛び込んでいく闘争心があるように思います。

質問 韓国人選手はスイングの綺麗な方が多いですが、どのような指導をしているのでしょう?

キム氏 年明けに韓国に行き、国の代表コーチとも選手の育成法について話してきたんですが、非常に基本に基づいた教え方をしていますね。コーチ自身に海外経験があるわけではなく、男子プロがコーチとなって教えたりするんですが、ものすごく基本を中心にした教え方をしています。だから、ジュニアを終わった頃には基本に忠実なスイングが出来上がり、その後は経験とともに選手自身の努力で日に日に成長していくというふうに考えております。

質問 男子プロがコーチを務めているそうですが、それらの方々は、子どもたちに教えるための何か特殊な勉強をしてから、ジュニアに接しているのでしょうか、それとも自分たちの体験をもとにして教えているのでしょうか。

キム氏 教えるうえで必要なことを勉強している部分もあります。韓国にはゴルフ科が設置されている大学もあります。アメリカではゴルフアカデミーといった、ゴルフ場の知識だとか、スイングの分析だとかに取り組める組織がありますが、それと同様の内容を大学で学ぶことができるんです。ゴルフ科出身のコーチが多いのは事実です。また博士コースというのがあるというのも聞いております。そういうところでゴルフ理論を学び、スイングを研究してきたコーチが中心になっています。

私は、日本のゴルフ界にとてもお世話になり本当に感謝しています。日本のゴルフ界がこれからも、もっともっと発展していけばいいなと思います。そして両国の架け橋となれるように、これからもっと努力していきます。これが自分にとって今後の使命だと感じています。
ご清聴ありがとうございました。                            (おわり)
◇                        ◇
金 愛淑(キム・エースク)1963年9月6日韓国ソウル生まれ。
ソウル体育高等学校(韓国)卒業後18歳からゴルフを始め、日本に舞台を移し、1985年LPGAプロテストに合格。1998年のダイキンオーキッドレディースゴルフトーナメントに優勝するなど、連続14年間シード選手として活躍。生涯獲得賞金306,883.640円。3年前から活動の中心をトーナメントからレッスン活動へと移す。ゴルフのための効果的トレーニングについて研究しており、ひとりでも多くのアマチュアゴルファーにゴルフの楽しさを伝えることを目標に、ゴルフ界発展のためさまざまに活動している。

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