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2014年3月26日水曜日

城下町の風景Ⅱ ⑤追手入口(傘師)・本町九丁目


きょうは和歌山市紀三井寺の桜の標本木で開花宣言が発表されました。近畿地方第1号だとか、
開花日は平年並みで、昨年比では8日遅かったとか、これから本格的な春が一気に進むでしょう

ところで、本題はいまでは昔日の面影がなくなってしまってますが、本町九丁目というと、和歌山城への玄関口「紀州街道」の出発点でした。(現在では本町4丁目までは交通量が多いですが、そこから先5丁目から9丁目までは寂れ、かつての和歌山城のメインストリートの面影は感じられませんが、よくよく観察すると、それらしいものに出くわします。ご自分の足と目で確かめて下さい。


            

和歌山名産、松葉傘 ⑤追手入口傘師

 城下町の入口、本町九丁目の約200年前の風景です。そこには傘屋が約20軒あり、裏町には傘作りの職人、傘師(からかさし)が集住していました。ここで生産された傘は、松葉傘または紀州傘といって、全国的に人気があったそうです。傘は竹と紙でできており、その製作工程が絵図に画かれています。
 正面奥の店では傘の竹骨をそろえて骨組みをし、右側の店ではすり鉢で糊をねって刷毛で傘の骨に付けて紙を張っています。店先では、雨が浸みこまないように油引きをして、先端に頭紙を付けています。でき上がった傘は店先で乾かされ、左側の店などで売られています。傘張は下級武士の内職というイメージですが、和歌山ではそれより進んでいたことがわかります。
 蛇の目傘や傘に家紋、屋号や「金八」などの文字が入ったものもたくさんあります。ちょっと前までは旅館名の入った番傘をよくみかけましたが、今ではすっかり少なくなりました。
 狭い通りには、魚を手にしたふり売り商人、米俵を3俵運ぶ馬、左下には背中に「西国三十三所」と書いた巡礼など旅人の姿もみえ賑やかです。左端には火の見櫓の梯子がみえ、上に半鐘が架けられています。風が強い日なのでしょうか。干していた傘が屋根の上に吹き飛ばされ、見上げる人たち、それを追って店から小僧が飛び出してきました。(和歌山市立博物館総括学芸員 額田雅裕)
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江戸時代の地誌書「紀伊国名所図会」に彩色し、当時の暮らしを解説する『城下町の風景』第2弾。次回は4月9日号に掲載です。
ニュース和歌山2014年3月26日号掲載

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