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2011年1月11日火曜日

11日・「卯」年に因む創作童話優秀作「幸せを呼ぶ黒ウサギ」

(ニュース和歌山・11.1.8今年の干支うさぎが主役 創作童話コンクール より)

『幸せを呼ぶ黒ウサギ』優秀賞 安原小6年 永廣 拓也くん

 あるところに、黒ウサギが住んでおりました。黒ウサギはとても暴れん坊で、町に来ては悪さをするので、みんなから怖がられていました。
 ある日、黒ウサギはまた悪さをしようと町へ出かけました。歩いていると、道ばたの大きな木の下で一ぴきの子犬がしくしく泣いていました。黒ウサギは無視して通り過ぎようとしたところ、子犬が声をかけてきました。「ねえねえ、黒ウサギさん。あそこの木の枝にひっかかっている風船取ってよ」。すると、黒ウサギは「へん、知らないね。自分で取りな」と言いました。すると子犬が「わーん。取ってよ、取ってよケチー」と大声で泣き出しました。
 
 あまりの大声に仕方なく黒ウサギは、「分かったよ。しょうがねえなぁ」とぶつぶつ言いながら、ぴょんと木の上に跳び乗ると、風船を取ってやりました。「わぁ。黒ウサギさん、ありがとう」と子犬が言いました。すると、黒ウサギは何だか変な気持ちになりました。
 
 またしばらく歩いていると、今度はカメおじさんに出会いました。「困ったのう。ツルおばさんとツルカメ公園で待ち合わせをしとるんじゃが、今からではもう間に合わぬ。ほんと困ったのう」とカメおじさんは言っています。
 黒ウサギは気にせず通り過ぎようとしたところ、カメおじさんに声をかけられました。「お前さん、このわしをツルカメ公園まで連れていってくれぬかな」。すると、黒ウサギは「お断りだね」と言いました。しかし、「たのむ、お願いじゃ」とカメおじさんがあまりにもしつこく言うので、「分かったよ」と黒ウサギはカメおじさんを連れていくことにしました。
 
 黒ウサギはカメおじさんをおぶって無我夢中で走り続けました。そして、なんとか待ち合わせ時間に間に合い、ツルカメ公園に着くことができました。「ありがとう」とカメおじさんは言いました。すると、黒ウサギは少し照れくさくなりました。
 
 町の中を歩いていると交番の前で子ネコが一ぴき泣いていました。今度はほうっておけなかったので、黒ウサギは「どうしたんだ」と声をかけました。すると子ネコは、「お母さんとはぐれちゃったの」と答えました。黒ウサギは「オレが探してやるよ」と言いました。すると子ネコは「でも、お母さんとはぐれちゃったの三十分前だったもの。もう遠くへ行ってるわ」と言っています。「大丈夫。オレの耳は十㌔先まで聞こえるんだ」
 そう言うと黒ウサギは、子ネコをおぶって走り出しました。黒ウサギは自分の耳をたよりにお母さんを探しました。黒ウサギはハァハァ言いながら走り続けました。
 そしてついに、「あっ、お母さん」と子ネコのお母さんが見つかりました。「黒ウサギさんありがとう」と子ネコは言いました。すると、黒ウサギはなんだかうれしい気持ちになりました。そして、黒ウサギは「だれかを助けるのってすごく楽しいな」と思いました。
 それっきり、黒ウサギは心を入れ変え、だれにでも積極的に手助けをするようになり、みんなから好かれるようになりましたとさ
………………………
おはなしボランティア「きいちご」代表の藤田妙子審査員
…暴れん坊の黒ウサギが困っている人を助けるうちに変わってゆく。誰でもほめられたり、喜ばれるとうれしくなりますよね。
(以上ニュース和歌山ヨリ)
※「兎」の創作童話優秀作の掲載は、「ニュース和歌山新聞」の土曜日版なので、次の作掲載まで間が空きます。この間は別のお話しで幕間を繋ぎますから、ご了承願います。

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