日本で最初の総合結婚式場の先駆けといわれる目黒雅叙園の木造(旧館)は、 太宰治の小説『佳日』にも登場する。絢爛たる装飾を施された園内の様子は「昭和の竜宮城」とも呼ばれ、ケヤキの板材で作られた園内唯一の木造建築「百段階段」(実際は99段)とその階段沿いに作られた7つの座敷棟宴会場の内の4つは、2009年3月に東京都指定の登録有形文化財(建造物)に登録された。
「十畝(じっぽ)の間」、「漁樵(ぎょしょう)の間」、「草丘(そうきゅう)の間」、「静水(せいすい)の間」、「星光(せいこう)の間」、「清方(きよかた)の間」、「頂上(ちょうじょう)の間」、計7つの中から4棟の座敷棟が登録された。
樹齢百年の床柱や天井、壁面、ガラス窓にいたるまで贅を凝らし、昭和初期における芸術家達の求めた美と大工の高度な伝統技術が融合した素晴らしい装飾となっている。
希望者は申請すれば観覧が可能となっており、イベントや宿泊、食事とのセットで公開されている。2010年(平成22年)1月29日から3月3日までの期間、初めて「百段雛(ひな)まつり」という豪華絢爛な催しが行われた(第一回)。日本全国にある雛文化の中から、非常に贅を尽くしたものが多いといわれる山形の雛を中心に、上記7つの宴会場で飾られることとなり盛況を博した。
・目黒雅叙園の見どころ
「百段階段」とは通称で、かつての目黒雅叙園3号館にあたり、昭和10(1935)年に建てられた当園で現存する唯一の木造建築です。 食事を楽しみ、晴れやかな宴が行われた7部屋を、99段の長い階段廊下が繋いでいます。 階段は厚さ約5cmのケヤキ板を使用。 階段で結ばれた各部屋はそれぞれ趣向が異なり、各部屋の天井や欄間には、当時屈指の著名な画家達が創り上げた美の世界が描かれています。
"昭和の竜宮城"と呼ばれた目黒雅叙園の建物の特徴は、装飾の破格な豪華さにあります。 最近の研究によると、その豪華な装飾は桃山風、更には日光東照宮の系列、あるいは歌舞伎などに見られる江戸文化に属するものとも言え、なかでも「百段階段」はその装飾の美しさから見ても、伝統的な美意識の最高到達点を示すものとされています。
天井には前室に8面、本間に15面、合計23面の襖仕立ての鏡面に荒木十畝による四季の花鳥画が描かれています。 黒漆の螺鈿細工が随所に見られる重厚な造りの部屋です。
室内はすべて純金箔、純金泥、純金砂子で仕上げられ、彩色木彫と日本画に囲まれた美しさは息を呑むほどの絢爛豪華さです。床柱は左右ともに巨大な檜で、精巧な彫刻 (中国の漁樵問答の一場面)が施されています。格天井には菊池華秋原図の四季草花図、欄間には尾竹竹坡原図の五節句が極彩色に浮彫されています。
格天井の秋田杉及び欄間には礒部草丘の四季草花絵、瑞雲に煙る松原の風景が描かれています。障子建具は非常に手の込んだ面腰組子です。
奥の間の床柱は黄檗丸洗。格天井の秋田杉には池上秀畝の鳳凰・舞鶴、欄間四方には小山大月の金箔押地秋草が描かれています。次の間の天井及び欄間は橋本静水等の画伯によるものです。
奥の間の床柱は北山杉天然絞丸太で、次の間の床柱は槇出節、両室とも格天井及び欄間いっぱいに板倉星光の四季草花が描かれています。
美人画の大家、鏑木清方が愛着をもって造った落ち着いた静かな茶室風の室です。特に奥の間の床柱は径一尺五寸の北山杉の天然総絞丸太でこのような逸材は今日、市場でもなかなか見出せないものです。廻り廊下の北山丸太を扱った化粧軒、障子建具、組子など、細心の造りです。扇面形杉柾板に四季草花、欄間の四季風俗美人画ともに 清方の筆です。
天井画は松岡映丘門下の作品です。前室、本間ともに格天井で、本間の床柱は黒柿の銘木を使用。
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ひな飾りの極致、ひな人形600点、絢爛豪華な部屋で 東京・目黒雅叙園
国内各地のひな人形約600点を一斉展示する「百段雛(ひな)まつり」が、東京都目黒区の目黒雅叙園で開かれている。園内にある都指定有形文化財「百段階段」に連なるきらびやかな7部屋で披露され、子どもを抱く男びなの人形や、洋装の明治天皇びななど、珍しい作品を楽しめる。
3月3日まで。
「十畝の間」に飾られた長野・松本の松本押し絵びな
=黒漆の螺鈿(らでん)細工が施され、長野県中野市の中野土人形が飾られている。
=黒漆の螺鈿(らでん)細工が施され、長野県中野市の中野土人形が飾られている。
「漁樵の間」に飾られた群馬・桐生のひな人形
=群馬県桐生市から、華やかな衣装をまとった段飾りが登場した。
=群馬県桐生市から、華やかな衣装をまとった段飾りが登場した。
「草丘の間」に飾られた新潟・村上地方のひな人形
=新潟県村上市で毎年開かれるイベント「町屋の人形さま巡り」を再現。
=新潟県村上市で毎年開かれるイベント「町屋の人形さま巡り」を再現。
「静水の間」に飾られた長野・須坂のひな人形
=長野県須坂市の豪商、田中本家のひな人形コレクションが飾ってある。
=長野県須坂市の豪商、田中本家のひな人形コレクションが飾ってある。
「星光の間」に飾られた内裏びな
=長野市の善光寺大本願から、天皇家ゆかりのひな人形。
「清方の間」に飾られた明治天皇びな
=洋装でいすに腰掛ける明治天皇びな
・「百段雛まつり」のパノラマ写真 (⇐これは必見です!)
この催しは2010年から始まり、入場者数は初回の約5万人から年々増え続け、昨年は7万人を突破。今年は、大勢の見学者を乗せた観光バスが1日に約50台訪れる日があるという。
今回扱っているのは、主に新潟、長野、栃木の各県に伝わり、江戸時代以降につくられたとされる人形たちだ。
百段階段の一番手前にある「十畝(じっぽ)の間」は、黒漆の螺鈿(らでん)細工が施され、長野県中野市の中野土人形が飾られている。
金箔(きんぱく)や金砂子で仕上げられた豪華な「漁樵(ぎょしょう)の間」には、群馬県桐生市から、華やかな衣装をまとった段飾りが登場した。
草丘(そうきゅう)の間では、新潟県村上市で毎年開かれるイベント「町屋の人形さま巡り」を再現。町屋内の茶の間などに、その家に伝わる古い人形を飾り、家の人が観光客に説明するイベントだ。男びなが子どもを抱っこし、女びなは手を広げている3人家族の人形もある。
静水(せいすい)の間には、長野県須坂市の豪商、田中本家のひな人形コレクションが飾ってある。京都御所を模した模型の中にひな人形を飾った「御殿飾り」もある。
星光(せいこう)の間には、長野市の善光寺大本願から、天皇家ゆかりのひな人形。普段は非公開の作品だ。
茶室風の「清方(きよかた)の間」。この部屋に入ると、江戸時代の人形職人大木平蔵のコレクションや、洋装でいすに腰掛ける明治天皇びなを見ることができる。
百段階段の最上階に位置する「頂上の間」は、長野県中野市で開催する土人形市「中野ひな市」の雰囲気を感じることができる。このひな市で、量産されていない希少な土人形を抽選で当たった人だけしか買えないが、今回は百段雛まつりのために制作された作品が並べられ、希望者には抽選で販売されるという。
2月下旬に山梨県甲斐市から訪れた主婦(66)は「5歳の孫のひな人形の毛(もう)せんはピンク色で、かわいいが違和感もある。ここでは人形はもちろん、備品も部屋も歴史を感じられて素晴らしい」と話した。
午前10時から午後6時まで。入場料は大人1500円、学生800円、小学生以下無料。問い合わせは目黒雅叙園(03・5434・3140)へ。
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