「ゴルフにおける韓国女子選手の強さの秘密」についてお話を続けている間に27日(日)には日本女子ゴルフトーナメント第12戦目ヨネックスレディスの最終日であった。
今回の優勝者は韓国人選手でなく中国人選手フォン・シャンシャンだったが、3打差4位でスタートしたフォンはスコアを3つ伸ばし、トップの日本人選手がスコアを伸ばせないままトップに追いつきプレーオフに入り2ホール目決着を着けた。
この結果これまでの12試合、6試合が韓国人5・中国人1が優勝し、この試合を含む4試合連続外国人選手の優勝ということになった。
では、本題に戻ってゲスト・スピーカー 金愛淑による「韓国人選手の強さの秘密」のお話を続けることにしよう。
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「国の代表を目指して頑張るジュニアたち」
韓国のゴルフを管轄するKGAは、韓国小学校ゴルフ連盟、中学・高校のゴルフ連盟、大学ゴルフ連盟というふうに分かれ、現在、ゴルフ部がある中学校は男子が212校、女子が148校、計360校にゴルフ部があります。高校では男子が212、女子が111、計323、小学生では53校くらいです。
今年発表された国の代表は、小学生のジュニアで男子9名、女子9名。予備軍なんですが、男子が21名、女子が17。国の代表が各6名ずつ。あとコーチが代表で2名、予備軍で6名。総勢76名で構成されています。2009年のアジア大会を目標に、この冬の合宿は宮崎県で行われています。
国の代表は、スポンサーが付きやすいという利点もあります。代表になると、国際大会に出場することで、国際経験が豊富になります。KGAによって作られたプログラムに基づき、一年間、体力訓練から、メンタル、科学的な基礎まで作られていくのです。国際大会に向けて、年間150間の強化訓練が行われ、貴重な経験、実力が積まれるのです。
ビッグスターになる近道でもある国の代表は、ジュニアゴルファーを持つ親たちにとっては、誰もが夢を見る場所。このゴルフのエリートたちは、国からさまざまな援助をしてもらい、ゴルフを通じて大学までの進学が特待生として約束されます。また、将来はプロゴルファーになるという目標が明確になります。
ジュニアゴルファーを持つ親たちには、年間約6000万ウォン程度の費用がかかりますが、韓国の代表になると、国の最高のコーチたちに無料で教えてもらえ、管理されたプログラムで訓練されるので、経済的な負担もありません。国の代表を目指すことに親たちが必死になるのも無理もないところです。
現在、日本で活躍している李知姫、全美貞、辛ヒョンジュ、宋ボベ選手など、ほとんどの選手が国の代表の出身者であり、朴セリ、申ジエ選手なども代表出身者です。国の代表として育った選手たちがプロの世界に入っていくのは、自然なことかもしれません。
「強さの秘密は「訓練」「精神」「献身」」
次は内部的な要因として、三つに分けてみました。体力訓練と食べ物、ハングリー精神の涵養、あとは選手家族の献身です。
まず、体力的な訓練ですが、特別な訓練を受けるわけではありません。朴セリの場合でも二十数階分の階段を毎日昇り降りして足腰を鍛えたとかいった話もありますが、体力をつけるための特別な訓練があるわけではなく、練習量が想像を超えるくらい多いということなんです。中学、高校生が一日に練習場で3000球以上のボールを打っているという話を聞きましたが、3000球打つためには、食事をする時間もないでしょう。私も練習する方だったと思うんですが、さすがに一日3000球は打ったことがありません(笑)。 食べ物についてですが、韓国人は食事をとても大切にします。よく食べて、よく体を動かし、漢方薬をサプリメントとして多く利用しています。
精神的な面では、ハングリー精神が旺盛だとよく言われますが、韓国の選手たちはとてもハングリーです。それは物質的なこと、例えばお腹が空くといったことだけではなく、意欲だと表現したいです。それは目標に対する意欲、執念というのがすごく、世界一にという夢を抱いて、眠る時間まで削っているくらいです。「やればできる!」という信念はどの国の人にも負けないと思います。
そして家族の献身というところが、一番のポイントといえます。多くの選手の場合、家族が一緒について回ったりする傾向が多く見られますが、韓国人ゴルファーの親たちは全財産を子供のために投資することも厭いません。優秀な先生に見てもらえるなら家を売ってでも費用を捻出し、勉強させますね。家族全員で海外に移り住むことも多いんです。子供だけじゃなくて家族も一緒に行って、家族に見守られながら子供たちは一生懸命に自分の夢を育てる。そして子供が成功した暁には、家族のために稼いだお金を使うのは当然のことだと思っていますし、それに対して子供の反発もありません。この傾向はスポーツに限りません。家族の絆が非常に強い民族だということができますね。
韓国のゴルフ界の未来を考えますと、キーワードは「協会中心」「選手育成、支援(政府、企業)」「ゴルフ人口の急増」「選手活躍」といったところでしょうか。ゴルフを大きな産業の一つとしてみており、国民スポーツとして位置付けられていますので、人気が冷めないんじゃないかと思うし、今後ますます日本やアメリカで多くの韓国人プロの活躍が見られると思います。
もう一つプラスしたいのが、韓国人選手たちは愛国心がものすごく強いこと。国旗を胸に貼って試合する時、彼らは自分自身に誇りを持ち、地域の人々や国民全体の信頼を絶対だと信じてプレーするのです。
良い選手を育てるためには、政府、企業、ゴルフ界、あとは親たちの協力と、選手たちが強い信念を持つこと。これが必要だと思います。
「広い裾野があるからこそ高い山ができる 」
私は、日本の企業に育てられた韓国人選手の一人です。当時は、情報量も少なく、純粋なスポーツとして認められていない時期でもありました。スイング作りにしても、先生が少なく、総武カントリーの会員さんのなかの在日韓国人の人たちが持ってきてくれる日本のゴルフ雑誌で勉強しました。
ゴルフ雑誌に当時活躍していた岡本綾子さんの連続写真が載っていまして、それを切り抜いてまねながら練習するというのが、日本でのゴルフ生活の始まりでした。
中学校では陸上の砲丸投げの選手だったんです。そこで援助してもらい、陸上で夢を持つことができましたし、高校に入ってからも国によって作られた体育学校に入って、そこでスパルタ式な訓練を受けながら高校時代を過ごしました。
韓国ではどのスポーツに関しても、選手を育てあげることに対して国が力を入れて援助しています。小さな体格ということもあり、砲丸投げの選手としてはアジア大会までは行けなかったんですが、多くの選手が育っていくんです。それは大学まであります。私が在学していた当時はゴルフの育成はなかったんです。でも今はゴルフにも力を入れ、ゴルフ部もでき、そこで強いゴルファーが育っているんです。
「韓国のプロゴルファーはどうして強いの?」という質問をよくされるんですが、プロゴルファーだけが強いのではなく、プロゴルファーになるためのいろいろな経験を積んだジュニアたちの広い裾野の中から優秀な選手がプロの世界に飛び出していくから、プロの世界でも力を発揮できるんだと思います。
ゲスト・スピーカー・金 愛淑(キム・エースク)・1963年9月6日韓国ソウル生まれ。
ソウル体育高等学校(韓国)卒業後18歳からゴルフを始め、日本に舞台を移し、1985年LPGAプロテストに合格。1998年のダイキンオーキッドレディースゴルフトーナメントに優勝するなど、連続14年間シード選手として活躍。生涯獲得賞金306,883.640円。3年前から活動の中心をトーナメントからレッスン活動へと移す。ゴルフのための効果的トレーニングについて研究しており、ひとりでも多くのアマチュアゴルファーにゴルフの楽しさを伝えることを目標に、ゴルフ界発展のためさまざまに活動している。
2010年1月から綴ってきたブログをマイナーチェンジしました。09年にはアメリカで初の黒人大統領オバマが誕生し「CHANGE]という言葉が流行語となりましたし、わが国でも政権交替が行われました。 このブログでは歴史ある地元紀州の「温故」と「知新」に倣って、さらに一歩踏み込んだ「創新」を視点として「温故創新」を採り上げて参りましたが、「街おこし」に熱心に取り組まれておられる方々とも連携しながら、さらなる充実を図ってゆきたく、タイトルも[徒然なるままに地元の『温故創新』を訪ねある記]と、より視点を明らかにしました。 なにとぞ、従来にも増してご支援下さるようお願い申し上げます。
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